ティモール短信(NO15)    
ティモール短信(No15)
JDRACEOD東ティモール現地代表
    久光 禧敬

 2006.5.12
 5月10日(水)
 本来、私どもがやらねばならない不発弾処理教育を未だ開始できないでいる。国家警察も首都ディリの治安維持で精一杯、内務大臣ロバト氏や国家警察長官パウロ将軍に早く教育を始めてくれと言い出せる状況にはない。
東ティモールに到着してもう少しで3ヶ月、この間、大スポンサーの外務省からはJDRAC(私どものNGOの名称)就中、現地代表(私)は何をやっているのかと教育的指導を再三受け、ついに最終通告に近い質問状が我が本部へ。ケ・セラ・セラとばかりは言っておれず、急いでエクスキューズ(出来ない理由を書くことは情けない)を何とか書き上げ、私どもの本部に送る。いつも迷惑ばかりかけている自分が情けない。
今日あたりから市内を走るミニバス(ミクロレット)、タクシーが確かに増えてきた。市民も避難先から戻りつつあるようだ。
今日は、おととい亡くなった国家警察隊員の遺体が故郷のバウカウ(東部)に運ばれたそうだ。わが友、パウロ将軍の心痛は察して余りある。
死んだ家族は、救援に向かう際、ピストル(武器)の使用を禁じた国家警察のパウロ将軍と国家警察の2番手(副司令官)の指揮を厳しく非難している。それに先立ち国立病院に負傷した警官を見舞いに来たアルカティリ首相も群衆から投石された。しかし、市内は確実に落ち着きを取り戻しつつある。
午後3時頃、(私はエレナさんの動向が、ディリ市の安全の一つの目安になると密かに思っていたが)わがオーナー・エレナさんがヴィケケ(東部に属する)から黒光りのする顔で元気に戻ってきた。ディリは大丈夫と思うかと聞くと「20日まで何もなければノー・プロブレム」といっている。17〜19日はこの国を支配しているフレテリン党の全国大会、20日はこの国の独立記念日。政府は独立記念日を予定通り行うと行っている。長嶋さん並の彼女のカンは果たして当たるのか?そうなって欲しいものだが。
 5月11日(木)
今日もエルメラで発生した国家警察隊員の死亡事件の後遺症で国家警察本部幹部クラスはその善後策で例によってミーティング、ミーティング。 市内は、徐々にではあるが、故郷に逃げていた人々が市内に戻りつつある。ホテルに帰る際、徳丸君とディリの三大露天市場、コモロ、タイベシ(26日に相当の露天が破壊された市場)およびベコラを見て歩くと、全盛時の1〜2割の店しか開いていないようだ。この露天市場を開いているのは東部出身者が多いらしく、そのため解雇国軍隊員たちや西側出身者のさらなる暴動を恐れて店を開いていないらしい。これらの人々が店を開けば、ディリの市内も安全といえるだろう。
解雇国軍隊員たちが東側と西側出身者の間で人事的な差別があったとしてその調査を求めているが、政府はその事実を調査する委員会をデモの最終日28日から立ち上げた。そしてまた、1昨日あたりから、デモ当日に殺された人が異常に少なく発表されているのでは?という疑問に対処するため、政府は死者の数に関わる調査委員会も発足させた。サルシーナ解雇隊員のリーダーは「調査委員会を作ることより、調査委員会のメンバーの構成(公正に選出されたか)、何をしてくれるかが大事。」と盛んに政府を牽制している。
 5月12日(金)
今日は国家警察本部に行く。依然、本部の高級幹部たちはピリピリしているが、下のクラスの警官たちの表情は比較的のんびりとしている。この格差は何だろう。
今週末から、来週いっぱいが、解雇隊員およびそのサポーターたちの動きの山場になるのは間違いないと思う。それまでに、
1.アルカティリ総理を核心とする東ティモール政府が効果的な打開策を打ち出せるのか。
2.また法的には行政執行能力はないが、解雇隊員に信頼されているカリスマ的存在のグスマン大統領が政府と解雇隊員の間に立って、解決策を見いだせるか。
3.宗教家は仲裁に入るのか。
特に、政府と大統領の動きに期待(注目)したい。そして一日も早い治安回復を期待する。    ドミンゴス君が、今日から、空港近くのロータリー周辺の露天コーヒー店街の一部が再開したという。大脇君が帰国の際、買い損ねた露天コーヒー店街だ。これも治安回復の兆しとも言えるが。
   今日、午後、常々「早く不発弾教育を開始し出来るように努力してくれ」と要請し続けていたカウンターパートのヘルマン警部から連絡が入り、ディリ市がこのように静かな状態が続くなら、明後日(15日)から、不発弾処理教育を始めてもらいたいという。本当かなと疑いながらも早速わが理事長にも連絡を入れた。やっと私どもの本来の仕事が出来るようになり、急ぎ日本大使館にも連絡する。
これなら、もっと教育は早くやれたのではと思ったりする。一体この国はどうなっているのか。私自身もわからない
。 しかし、当分は外務省からは怒られずにすむことは間違いない。やれやれ、いや待てよ、この国では油断は禁物、本当に教育が開始するのを見届けてから安心することだ。

               久光 記
遙かティモール短信(NO15)

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