ティモール短信(No5)    
ティモール短信(No5)
JDRACEOD東ティモール現地代表
    久光 禧敬

 2005.07.27
 今日は床屋さんの話をしましょう。床屋さんはDili市内にも結構あります。また、女性専用の美容サロンもあります。わたしの行く床屋さんは事務所から100mほどの所にあります。男性の整髪と女性用の美容サロンを一緒にやっています。通常は男性のヘアメイク屋さんが男性を、女のヘアメイク屋さんが女性をやっているようです。現地の女性も朝早くから結構来ています。
 まず、日本で言うと戦後の、場末の床屋さんを思いだしてください。鏡はあります。座席もありますがリクライニングはしません。待合いの席で並んでいるとどうぞという仕草、順番が来たので覚悟を決めて席に座ります。颯爽と色黒で歯の抜けた小柄な職人さんが「謎の微笑み」を浮かべて私の前に現れます。私も同様に「謎の微笑み」で迎えます。この「謎の微笑み」は日本人と共通のものがありまして、わからないときとか困ったときはお決まりの「謎の微笑み」です。職人さんは何も聞きませんし、私ももちろん何も言いません。あまり綺麗でないまた何人も使った白い?元は白かった上っ張りを着せられました。ここらあたりまでの手順は日本の1000円床屋とそれほど違いません。
 職人さんは、やおら持参のバリカン一式を入れた鞄からバリカンを取り出します。バリカンは結構綺麗です。そして所定の刃に調整し、バリカンを一挙に使い始めます。はさみは使いません。(使っている店もあります)どうなることやら心配ですが、男は度胸とじっと耐えます。耐えること約20分。どうやら終わったようです。恐る恐る鏡の中の自分を見ます。「丸刈りだ」。これを私は「マルガリータ」と呼ぶことにしました。いや僧侶にすぐになれる頭です。僧侶の方にはごめんなさい。いや恐れ入りました。
 ついで洗髪です。座席を変えて水の入った桶の前に仰向けにされます。そして洗髪。なにやらシャンプーまがいのもので頭を洗ってくれます。耳には多少の水が入りますが、一向気にしてはいないようです。終わると、何人も使ったと思われる乾いたタオルでごしごしと頭と顔をふいてくれます。そして元の席に戻って頭をマッサージ。マッサージが終わると「謎の微笑み」。散髪が終わったと言うことでしょう。ここで私も「謎の微笑み」と一緒に「オブリガート」と言って3ドル払って床屋を出ます。この間の所要時間約30分。  
 一応さっぱりした感じはしますが、見事な「マルガリータ」になりましたので、これでは帽子が必要です。暑さよけも兼ねて帽子をかぶることにしました。でも、これからは、ティトゥン語で頭の上部はカットするなという言葉を覚えなくてはいけません。ドライバーのドミンゴス君に聞くと「Leten Labele Tesi, Tesi Sorin Sorin Lio Kofut Deil」と。「Don’t Cut Top, Cut only Side and Back」の意味だそうです。もっとも、私の3人の仲間の頭もほぼ同様の「マルガリータ」ヘアスタイルですが。これは現地語(ティトゥン)がうまくないという証左でもあります。ただし、事務所のオーナーのフエルナンダ小母さんだけは僕らをハンサムといってくれていますが…。今日はこの辺で。  
追伸:Diliには信号機が1機もありません。また高層ビルもありません。3階建てが一番高いビルです。大学はDili市内だけで21もあるそうです。廃墟の多い町並みと子供たちが溢れている町です。
久光拝
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